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断熱のジレンマ 住宅も夏冬の衣替えは必要    やっと出会えた本物の家より

断熱のジレンマ 住宅も夏冬の衣替えは必要

住宅の衣替え。最近は、さまざまな住宅会社でもこの言葉を使っているようですが、とても重要で基本的なことですから、われわれの発想を真似されることはうれしい思いです。

衣替えの必然性は断熱のジレンマにあります。

前にも述べましたが、建物を断熱するだけでは、自然エネルギーを利用するにしても、省エネルギーを計るにしても中途半端な結果になります。ところが、最近の傾向として断熱性を高め気密化を計れば、いい家との錯覚が顕著なようです。

今、ようやく話題になり、物議をかもしている外断熱(外張り断熱)でも同じことです。断熱の方法論も重要なことなのですが、それ以前に、断熱だけでは解決できないジレンマについて少し考えてみましょう。

断熱とは熱的に空間を区分することです。

断熱は、その区分された空間に単に熱を入れない、空間から熱を出さない、という役割を果たしているだけです。

すなわち、必要な熱は採り入れて不必要な熱は拒絶するとか、有用な熱は逃がさないで不要な熱だけ逃がす、という器用なことはできません。単純に、入れない出さない、それしかできないのです。

ここから、冬も夏も、ジレンマが生じます。

住宅の衣替え

一例を挙げれば、冬、太陽熱を採り入れたくても、断熱された面からは採れません・夏も、室内にこもった熱は、断熱により逃げられません。

これは、屋根や壁だけではなく、断熱性能のアップした開口部にも同様のことが言えます。

もし、暖冷房などの機械設備に頼らなければ、高度に断熱された家は、状況によっては、冬は寒いまま、夏は暑いまま、なんてバカげたことが起こり得ます。実際に程度の差はありますが、現代の家づくりにはこうした矛盾が生じています。

現在の断熱住宅のほとんどは、機械設備を前提として成り立っていますし、それが前提の省エネルギーなのです。

断熱材をひたすら厚くし続けてきた、ここ20〜30年ですが、それによる主なる受益者は断熱材メーカーと暖冷房の設備機器メーカーです。大手住宅メーカーも、建物が腐れやすくなって本心は喜んでいるのかもしれません。

パッシブソーラー

熱のジレンマの中で、最優先に解決したいのは、夏と冬そして昼と夜のジレンマでしょう。

夏は、外からの太陽熱を防ぎたい、冬はそれを採り入れたい・夏の昼間と夜間もジレンマに悩まされます。夜間の涼しさは欲しく、昼間の暑さはカットしたいのですから。

冬の昼間の太陽熱は受け入れたい、しかし、夜間の冷気は防止したい、と矛盾だらけです。

この矛盾解決を現代住宅では、暖冷房機械で行っているわけです。建物側では何もなされていません。

呼吸する家

これに対してパッシブな家は、この断熱のジレンマを建築的手法で解決しようとしています。

例えば、冬の太陽熱は受け入れるが、夏の太陽熱はすぐに排出する。夏の夜間の涼しさは採り込むが、冬の夜間の冷たさは受け入れない。

冬、昼間の暖かさは採り込むが夜の寒さは受け入れない。

夏、昼の暑さはカットするが夜の涼しさは採り込む、といった相互の矛盾を建物の衣替えで対処します。

それらを実現する方法として、パッシブな家は、外張り断熱し、その断熱の外側に集熱通気層、断熱の内側に内壁空洞を設けます。

内壁空洞および間仕切り壁空洞は小屋空間そして一、二階のふところ空間さらに床下空間に連通され、空気がそれら一連の空間に流れるように工夫されています。こうした断熱内側の連通された空間を躯体内空間と呼びます。

同時に、基礎や土間のコンクリートを蓄熱体として利用します。

建物の衣替えは、躯体内空間の上下に設けられた専用の換気口を開閉することで行います。

換気口はおよそ、4月前半に開け、11月前半に閉じます。開の期間が夏モード、閉の時期が冬モードです。

冬モードでは、外張り断熱ですっぽりと被われた躯体内空間を、温度差により空気が自然循環(エアサーキュレーション)します。この時、外側の集熱通気層で集められた暖かい熱も躯体内空間に採り込まれます。私たちがエアサイクル住宅と名づけたのは、この冬の空気の流れからです。

夏モードでは、温度差と風力により、内壁空洞をはじめとしたすべての躯体内空間に外気が流れます。それにより昼間の熱気や湿気そして建材などに忍び込んでいる化学物質なども外へ放出します。夜間の外冷気を基礎などのコンクリートに蓄え、昼の暑さに備えます。

夏の働きの詳細は、これまでかなり述べていますので、ここでは繰り返しを避けたいと思います。また、冬の機能は、これ以降順次触れていきます。

ここで強調し再確認したいのは、断熱するということのジレンマ、矛盾点です。

断熱そのものでは、決して真の意味での省エネにもなりませんし、それどころか土台などの構造材を腐らせたり、湿気を呼び込んでカビ・ダニ、さらには、それらが原因のアレルギーなどを誘引してしまいます。

最近の高気密高断熱住宅は、ほとんどの場合、不健康きわまりない住宅になっている、と、いくら強調しても強調し過ぎることはありません。

田中慶明
やっと出会えた本物の家より

 断熱だけでは解決できない矛盾