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家中すぐに傷だらけでは?  本質を暮らす贅沢な家より

家中すぐに傷だらけでは? 

4ヶ月月にはいった甲斐犬と1歳半と2歳の柴犬、彼女たちと新築住宅に住む、新築の家があっという間に中古住宅になるのではと心配してくれる知人も多かった。

犬たちのイタズラとは長いつきあいである。これまではポメラニアンとパピョン、身体が小さい分、歯や爪も細く鋭い。その刃物?で椅子の脚や家具、造り付けの洗面や流しの台、果ては壁下の幅木まで、かじったり引っ掻いたり、椅子の脚はあっという間に半分の太さに、ソファのクッションで家中が雪模様も珍しくはなかった。

今は2歳半になる柴の彼女は身体が小さい分やはり歯は鋭利、特に子犬時代はソファの肘掛けなど、あっという間に食いちぎっていた。もう一人の柴も、穴掘り本能が色濃く残っているのか床板を掘り起こそうと時々躍起になっている。そんな彼女たちにイタズラ盛りのカイが加わったのだから、確かにたまらない。いくら気をつけてみても被害はなくならないと覚悟していた。

むしろ最初からそうしたことを設計要素に入れて、間取りやドッグフェンス、材料など工夫をできる限りしてみた。

柴はシモの始末は実に良い。おしっこトレーニングも即座にマスター必ず新聞紙の上で用を足す。そしてお尻も汚さない。甲斐もその日本犬の伝統を引いている、室内で伴に暮らすのはどちらもベストと思っている。問題は、物をかじる。持っていくなどのイタズラ対策。床・壁そして家具は特に注意と工夫が必要と考えた。

材料選びは二つの視点から考えた。一つ目は傷つきにくい素材、二つ目に傷ついても簡単に補修できそれが味になる材料。

まずは床であるが、傷つきにくい、水濡れに強いという点からタイル、二つ目の要素から無垢の床板を選択した。玄関から洗面など水まわり部分に磁器タイル、キッチンまわりは土系のセラミックタイル、2階リビングは栗の無垢板、階段はタモの無垢、寝室を桧の無垢板とした。

無垢の木や漆喰は、犬のキズに強い

1階のタイルは磁器タイルであるが、子どもたちに違和感を感じている様子はみうけられない。傷や汚れも付きにくい。汚れは雑巾がけで簡単に落ちる。2階のセラミックタイルは厚さ2㎝の土系で素足に気持ちいい。子どもたちも気持ち良さそげに寝転がっている。なかなかグッドである。

子どもたちは現在、寝室侵入禁止となっているため、桧の床板は無傷で守られている。その分、2階の栗板の傷は相当なもの。階段の最上部踏み板は角度を失いガウデイの曲面ばりに芸術的趣を加えた。これはこれで美しい。

漆喰と無垢の木の家

では栗板は惨めかというと、これがまたそうではない。栗板は国産の無垢材、節はないが目や色合いがバラエティに富んでいる、1枚1枚が違う表情で個性的、それでいて全体で織りなす風合いのバランスが良い。その個性の中に、子どもたちの付ける傷がとけ込んでしまう。

傷が全く目立たない、気にならないのだ。これは大正解だった。

どんな風に傷がつくのか、一つは大運動会・格闘技。追っかけたり追っかけられたり、そのあげくの取っ組み合い。「あっ、止めて」つい怒鳴ってしまう穴掘り。果ては何とかじっている。

穴掘りとかじりは、よ-く言い聞かせて最近はほとんどないが、入居当時の傷はなかなかのもの、でも補修は簡単だった。まず、サンドペーパーで磨く、これは荒、中、細など目を使い分ける。そしてSオイルをクロスで塗って終了。すぐに乾いて歩ける。Sオイルとは亜麻仁油系の安全な植物オイルであり、手も荒れることはない。

もともと、無垢の床板はこのSオイル仕上げ、塗ると板の色は少し濃くなり、時間とともに深みを増す。サンドペーパーで元の色合いに戻りSオイルで深みを増すが時間の要素はカバーで傷色ムラは避けられない。でも、気にすることはない。元来が模様も色目も変化に富んでいる、さらには時間が解決、すぐに同じような風合いになる。走ったり引っ掻いたりしてできた傷は、Sオイルでさらに目立たなくなる。本当に便利、楽である。とこんなことを繰り返しながら、栗の床板はその風合いを高めていくようだ。

また子どもたちは全員女の子。わが家は自然を大切にと獣医の勧めもあったが、避妊手術はしていない。犬の生理は半年に一度約1ヶ月続く。その結果、三人様なので1年に半年は床が汚れる。子どもたちは賢いもので、二度目からは自分で始末するが、追走ゲームもあり、この間は雑巾がけが避けられない。水ぶきして大丈夫ですかとよく聞かれるが、今のところ問題はない。栗板の色つや、味わいは深くなっている。

腰壁はモザイクタイル、上の壁と天井は漆喰
壁は?

女の子なので壁におしっこをかけることはない。引っ掻き傷と汚れに強い素材と考えた。腰壁にタイルという

ことで、モザイク状の1枚1枚はとても小さいタイプを、やがて子どもたちを開放する予定の玄関に張った。その上の壁と天井は漆喰とした。

階段室や2階は腰壁は設けずに下まで漆喰とした。引っ掻き傷が心配であったが、漆喰には手で芸術的文様が付けられる手法であったので、子どもたちがさらにその芸術性を高める分には、まあいいかと思い切った。

タイル壁は当然引っ掻き傷と汚れには強く、想定通りという感じである。驚きは、漆喰の壁である。漆喰の臭いに関する働きに加え、傷と汚れにも強いという点には感激したことは先に記した。

キッチンのカウンターの腰壁も漆喰とした。一番年下のカイがカウンターの上の物を奪おうとし、結果漆喰の壁を毎日毎日カリカリと引っ掻くこととなる。もう半年以上続くが、何と傷がない。覚悟していただけによろこびは大きかった。それ以来、知人たちに聞いてまわったが漆喰壁は固く強いということ。ますます確信を深めた。

漆喰は台所の天井まで

そして思いの外汚れない。これも知人たちの証言と共通だ。漆喰に飛び散った子どもたちのシーズン中の血も意外と簡単に落ちる。日本の伝統でもある漆喰にあらためて尊敬の念が浮かんだ。ありがとう。

そして家具。今までの手持ちの家具は突板をベースとし、その精度は高く美しいウレタン塗装が施されている。

一方、新しくしつらえた家具は無垢素材にSオイル仕上げ、純朴でありながらセンスのいいデザインである。

子どもたちとの共生を考えると、その結果はあまりにもはっきりとしてしまった。今までの家具は以前にも相当傷つけられていたので、尾山台に移す前に補修を新品同様であった。が、数日で無惨な姿になった。十分に注意していたつもりなのだが、一瞬の隙にやられてしまった。何事も悪いことは伝播するもので新人のカイにつられて引越当日に犯行の大部分が実行された。その家具の見事な縁取りが部分的に食いちぎられ、ソリッドの素材がむき出しになった。椅子の脚もかみ傷だらけ。見事なウレタン塗装だけに素人には補修のすべはない。以降そのままの姿が続いている。不思議なことに、子どもたちは十分に反省したらしく、その後、大規模な破壊活動を加えていない。

新しくしつらえた家具は傷に強かった。傷跡にSオイルを塗るとしっとりと輝きを取り戻す。栗板と違って塗布後の色合いは他の部分と変わらない。家具階段の端や食器棚の側面、椅子やテーブルの脚にかみついたり引っ掻いたりしたが、あっという間に修復、何も気にならない。心理的にも子どもたちにやさしくなれる、いい家具だなあ。

現在、カイはあちこちの物を持ち去りおやつと交換する遊びに夢中、カイは「交換」という言葉をちゃんとおぼえた。おかげで大きな傷が家具たちに付くことは少なくなった。


若林礼子 (2008.9故人となりました)
本質を暮らす贅沢な家 より

尾山台の家
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無垢の木と漆喰そしてLED照明のPAC住宅