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家づくり 自分の頭で考えていますか

家づくり、自分の頭で考えてますか?

 家づくりという新たな生活の場を創造する過程に見られるさまざまな家族像。そこには人のこころに住みつく魔性が時に顔を出す。 

一見幸せそうにうつる家族の姿、そして家族の誰もがこれまでよしとしていた生活に、家づくりは問題意識を投げかける。

長いこと一緒に暮らしていた家族が、今まで気づかなかった顔を覗かせる。こんなこと考えてたのか、こんな側面があったのかと。

今まで隠されていた不満や鬱積していたものが、新しい生活への転換を機に、要望、というかたちで顔を持ちあげる。 

家をつくるということは家族が家族たらんことをいやでも考えさせられる。家、あるいは家庭を疎んじていたということではないにしろ、それほど大きな関心事でなかった生活にそれぞれが目を向けることになる。

家づくりの入り口 自分の頭で考えることがスタート 

そうした家族のこころの襞が建設的な方向へ向かうためにも、まずこころの窓を開いて家づくりをすすめていきたい。 

自己を見つめ、さらに家族との関わりにおいて暮らしを見直すことは、時に非常な軌蝶を生むことになるかも知れない。しかしながら、時の経過がおかす人間関係の惰性に歯止めをかけることにもなり得る。 

家づくりが人生にとって大きなイベントの一つだと言われる所以は、単に経済面にのみ起因することではなさそうだ。 

個の尊重と同時に、お互いの共通意識のもとにつくりあげている家庭、という環境への尊重。家族一人ひとりの生活、そして個と個の有機的連動がっくり出す暮らしのかたちが反映される生活の場こそが、家庭に他ならない。 

だからこそ家づくりの基本は、自分の暮らしのかたちを見つめるところからのスタートということになる。 

ところがせっかく家族の暮らしに合った家づくりを始めたにも拘わらず、どこかで自分たちの暮らしを、むしろ家というかたちに合わせてしまうケースが意外と多い。 

なぜなのだろう。家づくりを考える時に生まれるさまざまな欲求。今までの住まいになかった空間や設備・家具・インテリア……。

今の生活習慣から脱皮したいと考えている暮らしのかたちを捨て、頭で描いた理想の暮らしへと目がいってしまう。

 家づくりの入り口 自分の頭で考えることがスタート

理想の生活と現実の暮らしが交錯する中で、自分たちにとって最もくつろげる生活のスタイル、食のかたちや団蕊のかたちまでを見失ないかねない。 

さらにさまざまな住まいの情報が、自分たちの生活を見失わせる。コマーシャルの目的は、潜在意識へと訴えかけ洗脳することにある。

だからこそ自分の頭で考えるという姿勢を崩したら、それこそさまざまな視点から説かれる生活提案に振り回されてしまう。 

家づくりに限らず、自分の頭でものを考えるという習慣を持ち合わせていない人が、意外と多い。人から強く言われるとそんなものかと思う。また、反対の強い意見を聞かされるとそれもそうだと思う。

その軟弱さを指摘しても、人の意見に振り回されている自分が見えていない。そのうち、人の意見があたかも自分の意見のように思えてきたりする。 

自分の頭で考えるということは自分自身の思いはどこにあるのかということと同義。言葉を変えれば自己を見つめるということに他ならない。そしてその自己に対しても、常に問題意識を投げかけ、自己を高めていくことだと思う。 

家づくりを自分の頭で考えるということ、イコール自分たちの暮らしを見つめるということは、その中から自分自身をどう高めていくか、そしてお互いに高め合うことのできる人間関係をどう培っていくかということではないだろうか。 

家づくりは、その過程の中で見えてくるお互いの内面を、家族という視点からだけでなく、一人の人間として見つめることのできるよい機会かも知れない。

1997年9月
若林礼子
「夫婦の生活実感でつくる家」の一文です。若林礼子は2008年9月に故人となりました。