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犬と暮らすということ  本質を暮らす贅沢な家より

犬と暮らすということ 

わが家は柴犬のピピともも、甲斐犬のカイと女の子ばかりの多頭飼い。一人っ子と多くの兄弟の中で育った子との違いに等しい。散歩に行くと、多頭飼いの子は遊び方、つきあい方を心得ている.うなったり吠えたり、尾つぼをさげて身体を縮めたりということはまずない。

朝晩の散歩はほとんど同じコース。休みの日、そしてゆとりのある朝や帰宅の早かった夜は家族全員で散歩に出かける。この子たちがいなかったらこんなふうに外を歩くたのしさには出会えなかったと思う。我々一一人と娘たちが一つとなって自然の中に身を置いている賛沢さ、見慣れた景色さえも新鮮に感じられる。

いつも会う散歩仲間。犬を連れていると「何歳ですか?」「男の子ですか?女の子ですか?」「お名前は?」と会話が始まる。これがヒトなら同じような年代だからと、見ず知らずの方へ「お宅のお子さんのお名前は?」などということはまずないと思う。犬の存在はかすがい以上かも知れない。とある朝、わが家の娘たちと合わせ10頭くらいがひとかたまりとなって道路端でしばし会談。ラブラドールがよく集まる通りはラブドーリ、多摩川の方向を指し、あちらの通りはレトリバー、などと、まじめそうなご主人からジョークが飛ぶ。

犬と暮らす家 犬と暮らす

尾山台に暮らし始めて約2年。比較的閑静な住宅街、でもあまりとりすましていないところがいい。特別知り合いもない街へ移り住み、しかも仕事をしている関係もあってご近所づきあいは難しい。そんな時、犬を通じて一人ふたりと顔見知りが増えてくるとそれだけ地元への愛着も期してくる。

ももとカイは大の犬好き、散歩の途中、犬を見かけるや尾つぼを振って近づく。当然避ける飼主もいる。犬自身が犬嫌いか問題行動のある子、または飼主が交渉を持ちたくないと思っている方のようだ。声をかけ合う飼主はみんな共通の犬好き、そしてオープンマインドのおつきあいだ。犬を連れてなかったらこんなに自然な会話は生まれないと思う。犬の存在が、警戒心を解き、心を開かせてくれる。

犬と真剣に向き合っていると、言葉が交わせないのに意志疎通できることに驚かされる。おそらく犬は声のトーンや大きさで怒られているのか誉められているかの判断をしているのだと思う。そして身体の動きや顔の表情からも読みとっていると思う。確かに、短い単語であれば手振りを交えて反復すると、かなり理解ができる。それだけに、伝えようと、努力して向き合う。愛情込めて、表情もやさしく・怒る時も何故怒られているかわかるようにと意識する。

対人関係にこれだけ気を配って会話していたかと思うと反省の一語。かなり無意識に言葉を使い、傷つけることもある、また真意が伝わっていないことも、それでも言葉なんてそんなもの、と、近い関係になればなるほど努力を忘れていた気がする。思っていることが言葉となり、それが行動に移されるという一貫性の大切さをあらためて我が身にインプット。
おんぶ犬

ところで、犬と暮らしたいと思いつつも我慢している家族は結構多い。犬は好きだし飼いたいけれど制約が大きいからと。理由のほとんどは毎日お散歩しなければ、旅行ができない、死んだ時悲しいし辛い、である。毎日のお散歩は私たちのように一緒に愉しめたら問題解決。

高齢者の方にとっては健康のためであったり、生き甲斐であれば尚良い。何かの役に立っている、自分がいなければという存在があることは人間、生きる気力につながる。犬を通じて人とのつながりが生まれることも散歩の妙と思う。

旅行については確かに海外の場合は難しいかも知れない。ただ、国内旅行であればたまにはペット同伴を試みてもいい。これまたおつきあいの輪が広がり、ペットにまつわるいろいろな情報収集の場ともなる。年に数回であればペットのお預けも悪くない。かなり開放的なかたちで預かってくれる所もあるし、ペットシッターに通いで面倒を見てもらうこともできる。ペットに集団生活を試みようとの教育の場があるくらいだからたまには社会性を身につけるために良いかも知れない。

高齢者の同居、小さい子ども、ペットに限らず制約といってしまえばみんな制約で、その中で調整して自分の時間をつくることに変わりはなさそうだ。

死について、これは死生観の問題、とひと言では片づけられないのだろう。しかしそれぞれのかたちで乗り越えるしかないと思う。私も何度も悲しい思いをし、それでもその度また懲りずに新しい子どもを迎えている。決して忘れてしまった訳ではない。いまでも歴代のわが家の子どもたちの愛くるしい表情の一つひとつがしっかり脳裏に刻まれている。無理に考えないようにするとますます感情とともに思い出がよみがえってくる。だからふっと想い出した時は、心の中で、○○ちゃんありがとう、君と一緒で幸せだった、たのしかったよって。

甲斐

ところで日本のペットショップには所狭しとケージが積まれ、子犬や子猫が陳列される。欧米のペットショップにはペットは一頭も置いていないそうだ。何年何月出産予定等の情報のみ。日本のように生まれて間もないうちに親元から離しペットショップヘという図式はない。

情報を頼りに実際に親犬と面会し、生まれてくる子を心待ちにするのだろう。

今、日本で処分されるペットの半数以上は、飼主が自ら保健所へ持ち込んでいるという。本当に泣く泣くの決断ということもあるかも知れない。しかし生命を粗末にするという視点からは本来どんな理由だって許されるべきことではないはずだ。

家族に犬嫌いはいないか、自分たちの家庭環境に合った性格の犬種は何なのか、男の子か女の子か、去勢あるいは避妊は受けさせるのかどうか、散歩、食事、手入れなど、犬の寿命を踏まえて最期まで責任を持てるのは誰なのか、家族で話し合っておかなければいけないことは山ほどある。

保健所への処分を依頼する飼主が絶えないという実態には、日本のような販売方法をとるペットショップの存在も大きいと思う。売れ残ったペットの行方、そして血統を重んじるあまり生まれたばかりで抹殺される命のことを思うと何ともやるせない。

何故か時代によって犬種にも流行がある、コマーシャルの影響も大きいのだろう、流行に乗れば価格が上がる、無理な繁殖が不健康な子犬の誕生とつながる、悪循環だ。

里親探しを必死にされてる方に陰ながら応援することしかできない自分に歯がゆさをおぼえながら、是非これから犬を飼おうとされる方には慎重に検討していただきたいと切に願うばかりである。

犬と生活 犬と共生 柴 

若林礼子 (2008.9故人となりました)
本質を暮らす贅沢な家 より

尾山台の家
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