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ノンホルマリンで健康住宅とは

ノンホルマリンで健康住宅とは

1997年の警告です。book夫婦の生活実感でつくる家 より

ホルマリン、ホルムアルデヒドを含む水溶液。われわれには消毒用として馴染み深い。小学校の理科室にはホルマリン浸けの標本がいくつも並んでいたし、病院の器具などの消毒に使われていて、危険という印象はなかった。

ところが新築住宅に入った瞬間に感じる刺激臭や目の痛みは、建材などに使われるホルマリンが原因であった。
ホルマリンのガスは粘膜を刺激し、皮層を硬化させる。しかし希釈液でも強い殺菌作用を持つことから、住宅、家具、衣類と、あらゆるものに使われている。

建材に含まれるホルマリンは、接着剤の添加物として合板や集成材に使われる。そして畳やカーペットのダニ騒動以来、一挙に増えてきたフローリングのほとんどが合板でつくられる。

床のフローリング、壁のクロスに使われる接着剤、階段やカウンターに使われる集成材、下地材、つくりつけ家具、システムキッチンの収納と住まいに使われるホルマリンはかなりのもののである。

特にフローリングは、WHOで示しているホルムアルデヒドの濃度基準を一○倍以上も上回り、フローリング仕様の増加とともに室内空気汚染の問題を大きくしている。

用途の広さそして刺激臭を伴うというところから、健康によくない化学物質のトップに挙げられるホルマリン。

最近はノンホルム、低ホルムの合板、ホルムアルデヒドを含まない接着剤を使った家づくりが健康住宅として注目を浴びている。
完全に住まいからホルマリンをなくすことは不可能にしても、健康に支障のないレベルまで減らすことはできる。だからといって健康住宅とはとても言えない。

自然素材、漆喰、無垢の木の健康な家

そもそもホルマリンが注目されるようになったのは、室内空気汚染の問題が顕在化してからのこと。ホルマリン以外にも住まいには健康を害する化学物質は山ほどある。

しかも、なぜそうした化学物質を使わなくてはならない住まいとなってきたかを考えれば、住まいから化学物質だけを取り除いても本質的解決にならないことはいうまでもない。

さらに、自然素材、エコロジー住宅の話で必ずといっていいほど取り上げられる断熱材について少しふれたい。
自然素材の断熱材がないわけではないし、いくつか自然素材の断熱材で建てられた例もある。

特にエコロジーの国、ドイツでは、何種類もの自然素材の断熱材が出されている。もちろん日本でもそうした断熱材の輸入代理店がある。
しかし、もしドイツの断熱材を日本の住まいで使ったら、おそらく住宅を早く腐らせることになるに違いない。ドイツで今出されている断熱材の素材は、ウール、新聞紙などの古紙、籾
がら殻や炭化コルクなどでできている。

雨の少ない、乾燥した気候のドイツだからこそ使える素材であって、日本のような湿気の多い国の住宅の壁に入れるのはかなり危険なことだと思う。

現在でも壁内や床下、小屋裏などの躯体内空間の風通しを失った木造住宅の腐れの問題が生じているところに拍車をかけることになりかねない。

ドイツの自然素材の断熱材に比べれば、はるかに湿気に強い日本の断熱材でも築後数年で家が腐ってきたなどという例がいくつもある。

住宅が早く腐るということは森林資源の破壊につながる。せっかくエコロジー素材を選んでも結果として家を腐らせてしまっては何をやっているのかわからない。

これは断熱材に限ったことではない。クロスにカビがはえるからこそ、殺菌剤の入った接着剤が使われるようになったわけで、接着剤を自然のものに変えたら、今度はまたカビが生じる
という問題になるのではないだろうか。

自然素材の生かされる家と、かえって副作用をもたらせてしまう家があるということを考えていかなくてはならない。

日本の住まいは木や畳の床、漆喰壁や土壁、襖や障子でつくられていた。こうした自然素材は湿気の多い時には吸湿し、乾燥してくると放湿するという素材そのものが吸放湿性を持っている。

しかも断熱材も使われていない、風通しのよい家だった。
今のように床は合板のフローリングやカーペット、壁はビニールクロス、天井もプリント合板や下地が合板で表面に薄い単板の突板をはった仕様が多くなり、しかも風通しの悪い住まいのつくりとなれば、ホルムアルデヒドの入っていない合板や接着剤を使うというのは健康住宅に近づくまだ第一歩としか言えない。

畳が減ったのは生活スタイルが変わったこともあるけれど、今の住まいにそのよさが生かされなくなってきた理由も大きい。

畳自体が乾燥しきってない藁どこを使っている、防湿フィルムで裏面を覆っているなどの問題、そして施工が大きく変わったことも畳のよさを殺す原因となっている。

畳の下地は、昔は荒板を隙間を少しあけて張り、その上に新聞紙、そして畳を敷いていた。
今は、ホルマリン入りの合板を敷き詰めその上に畳を敷いている。畳にカビが生えたりダニが繁殖する条件が揃っていることになる。

国産の乾燥した畳床を使った畳を選定し、下地の施工も変えていかなければ自然素材である畳のよさは生かされない。

畳に限らず、素材と同時に家のつくりそのものを変えていかなければ健康な住まいはつくれなくなってきている。

さらに、私たちを取り囲む生活設備機器がどんどん増えている。電気冷蔵庫や掃除機、洗濯機、炊飯器は当たり前として、電気ポット、電子レンジやガスレンジ、食器洗いに乾燥機、洗
濯乾燥機、ホームサウナ、洗浄機能付きトイレ、テレビも大型化し、パソコンも家庭に入り込んできた。

こうした電気製品と健康との関わりが電磁波という新しい問題を抱えることになる。電磁波が血液をはじめとする癌の誘因となると日本でも騒がれ始めている。高圧線の側には住めない、電化製品は危険という話になってきた。

実際に、電磁波測定器を持って外、ピルそして家の中のあらゆるものをチェックしてみると、危険という数値をはるかに上回る電気製品や、思いがけない物から電磁波が出ていてぞっとする。

特に限られたスペースの台所は、料理をつくっている時など下手をすると四周から電磁波を浴びることになる。

意外だったものは洗浄機能付きのトイレと、ACアダプターの側やホームコントローラーの前、そして裏面の壁でとらえた電磁波の大きさだった。蛍光灯も、天井についていれば距離が
とれるので問題ないと思っていたが、蛍光灯の上の部屋の床で大きく針が触れた時は、電磁波はコンクリートも何なく通すのだという実感をあらためて持った。

さりとて極端な電磁波恐怖症になる必要はないと思う。確かに、高圧線の側で始終電磁波にさらされているのは避けようがないけれど、電磁波の強さは距離の二乗に反比例するという性質を考えれば、家電製品については防衛策がありそうだからである。

具体的防衛策としては、レンジや乾燥機などを使っている時は側から離れる、ドライヤーもできるだけ離して使う、電気かみそりは昔ながらのかみそりに変える、電気毛布やホットカー
ペットなどは暖めておいて、使用する時は電源を切る。近頃流行りのウォーターベッドも同じこと。洗浄機能付きトイレは電源を切っていてもかなりの電磁波が出ていたので、コンセントを抜いて使用し、使う時にコンセントを入れる。

余談になるけれど暖房便座の電気消費量はばかにならない。各家庭が1.2階で使用するようになると、電力ピークになりかねないという話を電気機器メーカーの技術の方から聞いた。省エネということからも必要かも知れない。

これもちょっぴり賛沢、けれどお腹の出てきたお父さんの欲しがるホームサウナは電磁波を抑えた商品が出るまではちょっと危険かも知れない。

それからキッチンの足元の温風ファンもかなり電磁波が出ていた。ほとんど使わないのだけれど電磁波を測定する前に数回使用したことがあった。その時わが家の一九歳になる愛猫がこ
こぞと目をつけその場を動かない。

測定後はいっさい使用していないが、相変わらずわが愛猫は自分の場所と言わんばかりの顔をして台所仕事にはなはだ邪魔な洗い場の下から動こうとしないでいる。もし猫のいるお宅、足元ファンに限らず、ホットカーペットの上や電気ごたつの中を自分の寝床としている猫ちゃんは寿命を縮める可能性があるので要注意。

いろいろチェックしていて、設計の段階で検討したいと思う電磁波予防のための注意点がいくつか見つかった。

まず蛍光灯。電磁波の影響の少ないものもあるが、距離のとれないところの蛍光灯は考えた方がよいと思う。一つは子どもの勉強机にセットされている蛍光灯。もう一つはキッチンの蛍
光灯。仕事をする時どうしても頭が蛍光灯のすぐ側にいってしまう。

白熱灯に変えようと電気店に相談したが、白熱灯はどうしても幅を取り、すでに取りつけられている蛍光灯を変えるとなると、飛び出てしまい、かえって頭をぶつけ危ないとのこと、今
はなるべく頭を近づけないよう気をつけて使っている。これから家をつくる場合は注意したい。

また大型テレビのように高いレベルで電磁波の出るものについては、隣の部屋の用途もしくは家具の置き場を最初から考えておいた方がよい.テレビを置いた後ろの壁に面してベビーベッドなどを置くことは避けなければならない。

電磁波の測定器を持って家の中をうろうろしながら、本当はなくてもよいものがずいぶんと家の中にはあるなとつくづく思った。電化製品が量産されるようになって価格が下がったこと
も拍車をかけていると思う。特に一軒に数台あるテレビやクーラーがそのいい例である。しかもテレビは年々大型化してきている。大型になればそれだけ電磁波汚染も大きくなることはいうまでもない。

ホルマリンの問題から電磁波の話になってしまったけれど、何か共通した問題が根底に横たわっているような気がしてならない。

例えばビニールクロスを貼る時の接着剤や合板のホルムアルデヒドの濃度を気にするよりも、紙や漆喰へ、そして無垢材の使用へと目を向けていくべきだと思う。

もちろんコストの問題もあるかも知れないが、無垢材だって多少節があってもよいと考えればそれほどコストにはねかえらない。安全なピニールクロスというのも出ているが、湿気の調
整という視点からも紙。木。土を使いたい。

そしていくら自然の素材を使っても家のつくり方、そして住まい方を見直さない限り自然の素材は生かされない。

自然の素材は、太陽や風といった自然とのつながりの中で生かされる。畳や布団、木綿の布、木のまな板、みんな太陽の紫外線を必要としている。室内を風が通ることで湿気の調整も室内空気汚染の問題から派生した自然素材を見直そうという動きは、健康に住まうこと、イコール、エコロジーという分野へと視野を広げさせてくれた。

家はもちろんのこと、生活、生き方そのものが自然と伴にという精神にかなっているかを人のこころに問いかけてくれている。

恵まれすぎるくらい、便利な生活を提供してくれる数々の電化製品。その数から言ってもコストはばかにならない。その上、私たちの健康によい影響をもたらさないとなれば考え物ではないだろうか。

マンションの例はわかりやすいと思うが、高級マンションのお金のかかっている部分はほとんどが設備やインテリアのグレードである。住宅も賛沢をいえばきりのない世界ということになる。

家をつくる時、どこにお金をかけるかということにもつながってくる。電磁波の問題は、もっと本質的なところにお金をかけた方がよいとの示唆にもならないだろうか。

まして電化製品の中に身を埋める生活は、家の周りに高圧線を走らせる行為に他ならない。

原発の問題はもはや人事ではない。

健康な住まいを実現するにはもっともっとトータルな視点から見つめることと、一人ひとりの生活の意識がエコロジーへと向かうことではないだろうか。


1997年9月
若林礼子

「夫婦の生活実感でつくる家」の一文です。
若林礼子は2008年9月に故人となりました。



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