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ペットと共生する住まい  本質を暮らす贅沢な家より

ペットと共生する住まい 

犬好きか否かは、育った環境で決定づけられる気がする。ちなみに私は生まれた時から現在に至るまで犬か猫がそばにいなかった時期はほとんどない。赤ん坊の頃、まだ眼も開かない子犬と一緒に育てられ、伴に母のお乳を吸っていたという話がまことしやかに伝えられる。単に好きというジャンルを超えているのは自覚している。

そんな私が初めて家をつくった。もちろん犬との生活は大前提。問題は伴に暮らすパートナーだ。はっきり言って出会った頃は、動物とどう向き合って良いかわからないタイプだった。しかし、現在では私以上の親ばかを発揮、こと犬に関しては完全に洗脳されたといえる。

犬と一緒に暮らす家。私たちが考えられる範囲で工夫したこと、そして失敗したこと、是非これからペットと暮らす家を検討される方に参考にしていただけたらうれしい。
ペットと共生する住まい

その前に、犬は室内飼いか、外飼いかという論議から。

実は欧米諸国から、日本は動物虐待国との汚名をきせられている。おそらく、一日中鎖でつながれた犬の姿を見てのことと思う。思えば小さい頃見た外国テレビの犬は家の中を自由に歩きまわっていた。わが家には常に犬がいたけれど、確かにほとんどの犬は外飼いだった。

何故だろう、と。もちろん犬種の差もあるだろうけれど、住宅事情、そして家のつくりの違いが大きいと思った。家の大きさもさることながら、ようは土足文化と素足文化の違いである。土足文化であればそのまま犬が家の中に入ってきても問題ない。しかし畳の間ともなればそういう訳にはいかない。

かつて田舎では放し飼いが普通の時代もあったけれど都心部では許されない。都心部のさほどゆたかでない住宅事情の中では広々とした庭も望めず、それこそ縁側の下や狭い玄関スペースにつながれていた犬は多かったと思う。
夏つばき

ところが今や我が国もペット王国。飼い犬の数も1100万頭を超えるといわれる。ペット可のマンション人気、ペットと泊まれる桁、ペット同伴可のレストランやショップも、諸外国に負けじと増えている。犬種にかかわらず、外飼いから室内飼いへと、家族と伴に募らす犬が増えてきた。当然ながらペットとの共生を考えた家づくりが真剣に望まれている。

これまではマンション生活、しかも小型の洋犬ばかり。一軒家でしかも日本犬と暮らすとなると具体的なノウハウは持ちえていない。まずどこまでを私たちがいない時でも開放しておくかから検討。実はマンションではベッドも伴にしていた。シーズン中は、シーツを汚し、まるでサスペンス劇場のワンシーンさながらの朝を迎えることもあった。

それでも当時はピピとももだけだった。すでにもう一人計画していた犬を加え寝室を伴にするのはいかがなものかとパートナーはひるんだ。しかも加わるのは子犬だ。寝室については子どもたちが大人になるまでは、家づくりを契機にしばらく入れないということで一件落着した。
時計草

犬との生活で最も重要なことは人間にも犬にもできるだけストレスとならない生活環境をつくることだと思う。わが家の場合、甲斐犬が1歳近くになるまでは玄関に置いたそれぞれのケージに入れて留守番をさせていた。夜は玄関まわりから階段を絡めて2階を開放という

生活だった。しかし仕事で遅くなった時など長時間ケージに入れたままにしてあることで、私のストレスはひどく募った。

子どもたちはといえば、どんなに遅く帰ってもケージから開放すると至福のよろこびといった表情で迎えてくれる。耳をうしろに目を細め、口をきゅっと横にして本当に身体全体で笑う。長時間に旦るケージの中でウンチやおしっこをどの子もしていない。

そんな子どもを見て、我がパートナー日く。人間の子どもだったら虐待だよな、笑顔どころか、反抗するに違いない、下手をすればぐれるぞと。

今は昼夜開放しているので私のストレスはなくなった。開放しても自らケージに入って寝ていることもあって、意外と落ち着く場なのかも知れない。ケージでおとなしくできるようにしておくことは緊急時や何かの時には必要なことだ。
犬と暮らす

子どもたちがのびのびと暮らせるよう、まず空間のつくり方と内装材の仕上げを工夫した。子どもたちの開放空間となる玄関は広め、階段はゆったり、17坪ほどの2階のフロアーは、トイレを除いてすべての空間をつなげた。

玄関と階段まわりの床と腰壁をタイルにし、階段は堅木のタモ材を使用。2階の床はリビングを栗材とし、キッチンは厚さ2cmの素焼きのタイルとした。幅木もタイルを代用。1,2階とも壁・天井はすべて漆喰仕上げというつくりだ。

わが家の漆喰はほとんどの表面がパターンを描いた独特の仕上げである。その中に藁や小石が混ざっている。

いわゆる表面が滑らかな鏝で均一に抑えた仕上げとは違う。それだけに表面がはがれてこないかとか、挨が付着しないか、汚れた後のメンテナンスはどうするのかと、内心不安であった。しかしペットと共生する住まいの第一のヒットが何とこの漆喰であった。もともと漆喰は湿気の調整や厚く塗れば蓄熱の機能を十分発揮することから室内の温熱環境を安定させることは知っていた。

ところがまず驚いたことは臭いの吸着力だった。室内を遊びまわる子どもたちの臭いがほとんど感じられない。お客様が見える時は約6畳の玄関に置かれた三つのケージに子どもたちを入れているが、犬の臭いがしないと驚かれる。

漆喰

左官屋さんは、実は淡路島で建築されたPAC住宅がご縁で知り合った漆喰の名人。名人に育てられた職人軍団が淡路から来てくれた。材料も淡路のものだ。漆喰のパワーは臭いばかりでない。犬が爪を立てようが、走りまわってぶつかろうが表面はびくともしない。さらなる驚きは挨が付着しない、もちろん抜け毛がまつわることもない。

さらに汚れにくい。白の漆喰で仕上がった美しいキッチンの天井を見上げた時、この美しさはいつまで持つのやらと口には出さずも少々戸惑いをおぼえたものだ。ところが天井に取り付けられた火災報知機のプラスチック部分は黄ばんでいるのに、漆喰は美しさをそのままに残している。さすがに床面に近い壁の一部は犬の手の跡などで多少汚れる。これも水を含ませた布で落とせる。漆喰と木部の取り合いの隙間や、ちょっとしたクラックもその部分だけ簡単に補修できる優れものだ、これまでの漆喰に対する認識が大きく塗り替えられた。

わが家の階段材はタモ、子どもたちを解放している2階の床板は栗を使っている。同じ無垢材でも、針葉樹の桧や杉、サワラなどと比べて堅い。しかも栗の床は文様があって傷が目立ちにくい。無垢の良さは多少の傷やかじられた跡もサンドペーパーでこすってSオイル(亜麻仁油系の安全なオイル)がけで、自然の経年変化よろしく馴染んでしまう。
無垢の木の階段 無垢の木の階段

栗の床材は15㎜の厚さがあるが、一部に深さ10㎜ほどの穴を開けられてしまった。穴掘りの名犬の仕業だ。こんな時もその部分だけを張り替えることができる。そして1,2ヶ月もすると色がすっかり落ち着いてくる。

タモの階段材は子どもの頃のカイと、例の穴掘り名犬ピピによってだいぶかじられた。階段の踏み板のコーナーはサンドペーパーで丸みがかっている。それでも違和感がないから不思議だ。家具にも同じことがいえる。

さらに、無垢の木の仕上げも重要。最初から塗装品であったり、仕上げがワックス塗りであったりすると、場合によっては人も犬もすべる。犬種によっては床のすべりは大きな打撃となりかねない。

自然な室内環境もペットにとっては重要。夏、クーラーが身体に悪いのは人間ばかりではない。犬だって木陰の涼しさを求める。わが家は躯体内を自然換気するPAC工法、そして徹底した窓の日射遮蔽により留守中もエアコンを使用しないで済んだ。外気の高い日は閉めきった状態、風を通した方が良さそうな日は人の入れない幅のジャロジーを開けて外出していた。

 泥棒の入れない幅のジャロジー窓 泥棒の入れない幅のジャロジー窓 泥棒の入れない幅のジャロジー窓

暑い盛りに帰宅しても室内はむっとした感じがなくまさに木陰の涼しさ。暑さに弱い子どもたちも心地良く夏を過ごせた。

冬は「かくれん房」(150〜153頁参照)という蓄熱土間暖房により建物内はどこもほぼ均一な温度となる。およそ21℃近くの室内環境は50代の男と女にとってはまさに快適、しかし子どもたちにとってはもう少し低い温度の方が良いのかも知れない。だが陽だまりの中で身体を寄せ合って寝転んでる姿を見ると、室温は関係ないのかなと。吹き出し口付近が熱くなるような普通の暖房と違って、かくれん房の幅射暖房は犬にもやはり快適なようだ。

次に失敗談。まず挙げられるのがコンセントの位置。今ではおさまったものの、カイが子どもの頃はコンセントのプラスチックの枠をみんなはがしてしまう。枠がはずれると今度はスイッチそのものも器用に取りはずす、しかも瞬間芸だ。現場を目撃した二人の親ばかは、怒る前にあまりの手さばきに「こいつはすごい」と。

という訳でコンセントの位置は犬の手の届かない所に考えたい。壊されること以上に実は感電が心配だ。電気工事の職人さんの話ではコンセントに爪をかけて感電死した犬が実際にいるとのこと、要注意だ。コンセントは室内の美観という点からも場所と設置の仕方を工夫していきたい。

もうひとつは、ケージの位置。来客やら宅急便やクリーニング店といろいろな人を迎える玄関スペースにケージがあると、番犬役の子どもたちはしばし吠える。犬の嫌いな人はいやだろうし、犬も怖がったり嫌っている人間にはより警戒心が働く。双方にとって宜しくない。ということで玄関スペースにケージを置くのは止めた方が良さそうだ。むしろ玄関スペースとつながった空間に仕切りを設けて犬のスペースを確保し、そこにケージを置くという手もあると思った。もちろん土地の条件などが許されればである。

犬と暮らす

最後に不在の時に開放しておくということは、安全性への配慮がとても重要となる。イタズラ盛りの子犬の時はサークル等で安全な場所を確保する必要があると思う。今は不在の時は開放なので、まず口に入れたら危険な物は手の届かない所に置くことを徹底している。たとえば食卓の上の楊枝など、また鉛筆やボールペン、マジックなどの筆立て、ペーパーナイフのようなものと、書斎まわりは意外と危険な物が多い。コンセントのスイッチやテレビの配線などは置物でガードしていく。

植木鉢や落ちたら壊れる陶器類は高い位置には置かないようにしている。ちょっとした小物も割れるものは鉢や皿の下に滑り止めの工夫をしている。

もちろん普段のしつけも大切で、今でこそ低い位置に植木鉢が置けるようになったが植木の葉っぱや花を噛まないように、鉢の中の土や石で遊ばないようおぼえさせるには多少時間がかかった。

愛情を持って接していれば大人になるにつれて本当に良き伴侶となり得る。犬の性格はもともとの遺伝に起因することもあるかも知れない。しかし孟母三遷ではないけれど環境、つまりは家族とのかかわりあいの中で愛すべき存在に絶対になるものと私は信じている。

犬と暮らす 

若林礼子 (2008.9故人となりました)
本質を暮らす贅沢な家 より

尾山台の家
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